本文へスキップ

コラム・読み物

代表・出口胡蝶による、
書道や筆耕にまつわるコラムをお届けします。

書アート作品「樹」の制作風景

墨の表情と向き合う、作品制作の裏側

個展 制作風景 書アート 書作品 CACA

出口胡蝶

書アート作品「樹」

出口胡蝶が所属するCACA(現代アート書作家協会)の御岳制作研究合宿では、数々の作品に挑んできましたが、1枚も合格できないまま終わることもしばしばありました。個展「夢」では、その中で何とか完成に至った作品「樹」を展示しました。墨をたっぷりと含んだ線の勢いや緩急が、筆路の中にマチエールとして浮かび上がり、墨ならではの深い表情へとつながっています。一方で、最後まで乱れたり途切れたりせずに書き切れているかが問われるため、ごまかしのきかない難しさがあります。

個展「夢」に展示した作品「樹」の装丁なし写真
作品「樹」

完成した作品の前に立つとき、制作に重ねた時間や、紙の上に現れる墨の濃淡とにじみを少しだけ想像していただけたら、作品の見え方も変わるかもしれません。個展「夢」では、多くの方に実物の墨の深さをご覧いただきました。


余韻:制作地へ向かう道

最後に、制作地へ向かう道中の風景を少しだけ。記事の本筋からは離れますが、雨と霧に包まれた山の空気も、この制作の記憶の一部として残っています。

霧雨に包まれた御岳山の鳥居
霧雨の中に立つ鳥居。制作の場へ向かう道にも、静かな気配がありました。
雨と霧に包まれた御岳山の参道
雨と霧の参道。山の湿度や空気も、制作の余韻として残ります。
御岳山の宿坊に掲げられた木の看板
制作期間に滞在した宿坊の趣。

御嶽合宿期間中に滞在する宿坊「能保利」では、毎晩それぞれの作品を持ち寄り、参加者が順番に先生の厳しい指導を受けながら、翌日の制作に向けた作戦を練ります。字のバランスはもちろん、紙の大きさに対して筆の大きさが合っているか、墨の濃さはどうするか、滲みを出すか出さないかなど、作品づくりの具体的な方針が作戦会議で話し合われます。