個展「夢」に込めた想い
出口胡蝶 書作品展「夢」へ寄せて

「夢」という字の自由さ
「夢」は、私の好きな漢字として、ずっと中核となっている文字です。物体として存在するものではないので、答え方は様々ではありますが、平仮名で書いても「ゆめ」は曲線美で柔らかく、音の響きとも相まった優しさがあります。
漢字の「夢」を形だけで見たとき、上部は横に長い線で密度があり、下部の「夕」の部分は、左斜めに伸びる線だけでどこか心もとない感じがします。「山」のように三角形の安定性を持った漢字と比較すると、「夢」は逆三角形で浮遊感があり、風船のように自由にどこへでも行ける印象に見えてきませんか。
その自由さが、誰にでも希望として寄り添える漢字「夢」なのではないかと考えます。
色彩の力
「夢」を今まで何度か作品として書いていますが、特にカラーが似合う漢字だと、無意識に感じていました。毎日着たい服の色が変わるように、「夢」に対しても、その日によって違う色で表現できます。
今回の作品は、それが色彩のレイヤーとなり、色んな景色が写り込んで見える作品となりました。技術よりも、色の魔術により生まれた「夢」であり、「書」です。
実物で感じてほしい線と装丁
伝統古典の書の骨格を崩し過ぎないことを守りつつ、線化粧や形を少しアレンジすることで、よりイメージが伝わればと思います。
また、和紙の繊維をつたって滲む濃淡や線は、実物でしか感じ取れないものがあります。掛軸や額など、一点一点のモチーフに合ったコーディネートで装丁し、作品の個性を最大限に引き立てるようにご用意しております。
書に真摯に向き合った10年間
CACA現代アート書作家協会 岡本光平氏に入門して10年間、月に6回のワークや、年に2回の御岳山合宿、協会主催の展覧会に出品し、書の技術はもちろんのこと、作品作りの考え方など、各回ごとに違うテーマで書を研究する講義に参加してきました。
モンゴル、中国、韓国など、毎年のように書や漢字のルーツとなる歴史的遺跡、文房四寶を巡る旅、現代アートの旅に参加し、書を大きく俯瞰してみることで、作家として吸収して得たことをどう現代に伝えていくかを考えるきっかけになりました。
書は、深く学べば学ぶほど、浪漫に溢れた迷宮のような世界だと感じています。
ご来場くださる方へ
私の7回目の個展となりますが、今まで以上にたくさんのお客様との出会いとなる「夢の時」を楽しみにしております。まずは、このコラムを読んでいただきありがとうございます。ご来場をお待ちしております。
出口胡蝶